- “Otaku”企画 vol.2 -
 
 
 
 

「プロ野球選手、医者、パティシエ、デザイナー…木地師!!!」

 
 
2020/04/08

 

 

”木地師”って漢字は読めるし、何となくは想像出来るような出来ないような…という皆様朗報です。今回は改めて私たち匠頭漆工が看板を掲げる『木地師』という職人仕事を改めてご紹介しようと思います。
 
石川県には三大漆器生産地があります。「塗りの輪島」「蒔絵の金沢」そして私たち「木地の山中」です。”木地の”と言われているほど、山中漆器はその木地の質と量で有名。”Otaku”企画第二回目は、全ての漆器を支える”木地”を生み出す職人木地師のお話。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ザ・プロフェッショナル職人集団の中間地点

 
 
山中漆器は勿論のこと、日本における伝統工芸は基本的には分業制。それぞれの工程にその道のプロである 職人が関わっているのが特徴です。一つのアイテムが皆さんの手元に届くまで、実に様々な職人の手を介して創り上げられていくのです。
  
 

私たち山中漆器の器は、山から木を伐り出す山師(やまし)から始まり、塗師(ぬし)まで、又は装飾を施す場合は蒔絵師(まきえし)までが携わっています。人生をかけて一つの仕事に従事することが多い為、私たちの二代目や荒挽き師の戸田さんをはじめその道60年以上の職人も多く存在し、深い知識や経験に裏打ちされた技術が光ります。私たちの職人頭、二代目章二さんは、寝ても覚めても木のことばかり。うまくいかなかった作業工程の解決策が夢に突然現れ、翌早朝に起きぬけ工場に直行し作業に没頭することなんかもありました。そんな章二さんは木や木地の話をするとキラキラ輝きながら楽しそうに話します。

 
 
 
 
 
 
 

荒挽き師さんからのバトンを引き継ぎ、木地を仕上げる。

 
 

 
 
荒挽き(又は粗挽き)師は丸太の状態から、輪切りにし、夫々の器のサイズに切り分け、粗方の形に挽きあげる職人さん。写真は木地の荒挽き状態。
 
 
 
私たち木地師は、荒挽き師が作ってくださった「荒挽き」を受け取り、器の形の成型=木地を仕上げる工程を担っています。この漆を塗る手前のものを白木地(しらきじ)と言い、ここから塗師さんにバトンを渡します。 
 
受け取った荒挽きの段階ではまだ内部に水分がたっぷり。このまま挽いてしまうと水分が抜けた後に曲がったり折れたりと、器として使えなくなってしまうんです。そこで、木地師として行う第一工程は大切な大切な「乾燥」。木には私たち人間の”動脈”と”静脈”のような太さの違う水分管が通っています。このどちらもコントロールすることで、素直な木へと変貌を遂げ、繊細な加工が可能になります。ただしこの水分量は木の種類や季節よっても変化するため、夫々の特性を熟知していないと調整するのがとってーも難しいんです。
 
 
 左は乾燥室内の様子。お椀などをタワーのように積み上げ乾燥させます。右はその乾燥室をコントロールするスイッチたち。
 
 
 
 
 
 
 

半官半民ならぬ、半機半民

 
 
 
乾燥を終えた器たちは、挽きあげる工程に向かいます。私たち匠頭漆工が使っているのは『鉄鋼旋盤』という半機(械)半民(人力)もの。一つ一つ手で挽きあげることは勿論出来るのですが、そうすると人件費がかかり非常に高価なものになってしまいます。一人でも多くの方に気軽に使っていただきたいので、手作りの刃物を取り付け⇒作り上げる形をセッティング⇒機械が回転する木材に刃を当て削る⇒微調整と最終仕上げは職人の手で行うという鉄鋼旋盤を取り入れています。これは両者のいいとこ取りといった感じ。全て手作業よりも格段に効率よく挽くことが出来る上、職人が”木”という難しい自然素材にしっかり向き合い対話することが出来る。こうすることで木本来の魅力を引き出した、素敵な器を生み出せるんです。自然素材は化学素材のように均一化し、全てを同一として扱うのは不可能です。
 
その工程の様子はこちらで動画がご覧いただけます ⇒Shozu Shikko
 
 
 
 
 

まずは「木地師」の存在を知ってもらえると嬉しいです。

 
 
工程一つ一つ一つ、使う道具一つ一つとっても語りたいことは沢山いっぱいあるんです。先日、使用している「刃物」について二代目に改めてインタビューしたところ、刃物だけで1…2時間も語ってくれました。詳細は追ってコラムにしていきたいと思います。
まずは、伝統工芸がスペシャリスト集団によって成り立っていること、山中漆器は山師、荒挽き師、木地師、塗師、蒔絵師の手で創り上げられていること、そして、プロ野球選手や医者、パティシエやデザイナーのように”木地師”というかっこいいーー職業があることをお見知り置き頂ければ幸いです。
 
 
 
 
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